集まっているのへ、不思議そうに視線を投げた。
しかし距離が大分遠かったので、野道が白地の帯のように見え、人の姿が蟻のように見えるだけであった。
そこであやめ[#「あやめ」に傍点]は眼を移し、はるかあなたの野の涯に、起伏している小山や谷を背に、林のような木立に囲まれ、宏大な屋敷の立っているのを見た。
あやめ[#「あやめ」に傍点]にとっては実家であり、不思議と怪奇と神秘と伝説とで、有名な荏原屋敷であった。
あやめ[#「あやめ」に傍点]はしばらくその荏原屋敷を、憧憬《あこがれ》と憎悪《にくしみ》とのいりまじった眼で、まじろぎもせず眺めていたが、野道の上の人だかりが、にわかに動揺を起こしたので、慌ててその方へ眼をやった。
怪老人の魔法
野道の上に立っているのは、例の「飛加藤《とびかとう》の亜流」と呼ばれた、白髪自髯の老人と、昼も点っている龕燈を持った珠玉のように美しい少年とであり、百姓、子守娘、旅人、行商人、托鉢僧などがその二人を、面白そうに囲繞《とりま》いていた。
不思議な事件が行なわれていた。
美少年が手にした龕燈の光を、地面の一所へ投げかけていた。夕陽が強く照って
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