いる地面へ、龕燈の光など投げかけたところで、光の度に相違などないはずなのであるが、でもいくらかは違っていて、やはりそこだけが琥珀色の、微妙な色を呈していた。
と、その光の圏内へ、棒が一本突き出された。飛加藤の亜流という老人が、自然木の杖を突き出したのである。円味を帯びたその杖の先が、地面の一所を軽く突いて、一つの小さい穴をあけると、その穴の中から薄緑色の芽が、筆の穂先のように現われ出で、見る見るうちにそれが延びて、やがて可愛らしい双葉となった。
「これは変だ」「どうしたというのだ」「こう早く草が延びるとは妙だ」と、たかって[#「たかって」に傍点]いた人々は、恐ろしさのあまり飛退いた。双葉はぐんぐんと生長を続け、蔓が生え、それが延び、蔓の左右から葉が生い出でた。二尺、三尺、一間、三間!
蔓は三間も延びたのである。
と、忽然蔓の頂上《てっぺん》へ、笠ほどの大きさの花が咲いた。
「わッ」
人々は声をあげ、驚きと賞讃と不気味さをもって、夕顔のような白い花を、まぶしそうにふり仰いで眺めた。
「アッハッハッ、幻じゃ! 実在《ほんもの》ではない仮の象《すがた》じゃ!」
夕顔の花から二間ほど
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