ね、たあた[#「たあた」に傍点]を」
 足袋を穿けというのであった。
 ある時私はこう云って訊いた。
「誰かと公園で媾曳をしたね。刑事が淫売婦だと云っていたよ」
「え、したのよ。県知事さんと」
 大変サッパリした返辞であった。――それだから私には安心であった。
「お前は知っていて売ったのかい? ユダの紋章のある貨幣だけは、すくなくも本物の白金《プラチナ》だと」
「いいえ」と彼女は笑いながら云った。
「あのユダという人間が、一番厭らしい顔付きでしょう、それで妾売ったのよ」
「なるほど」と私は胸に落ちた。
「そうだすくなくもイスカリオテのユダは、女や小供には喜ばれない、そういう顔の持主だ」
 私達二人は平和であった。
 しかし私は時々思った。
「キッスぐらいは許したかもしれない」
 だが直ぐ私は思い返した。
「いいではないかキッスぐらいは、私だってこれまでいろいろの女に、随分唇を触れたではないか」
 穏かに時が流れて行った。
 ここに一つ残念なことには――だが良人たる私にとっては、かえってひどく[#「ひどく」に傍点]安心な事には、――彼女の容色がにわかに落ちた。
 それは苦労をしたからであ
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