話ではいけない、行って来ましょう。行って店員を引っ張って来ましょう。信用のある金属商の、鑑定に達した店員をね」
 彼女は書斎を飛び出した。電話をかける声がした。タクシを呼んでいるらしい。
 間もなくタクシがやって来た。
 彼女は乗って出て行った。
 私は黙然と腰掛けていた。
「彼女はひょっと[#「ひょっと」に傍点]すると狂人《きちがい》になるぞ」
 私はしばらく待っていた。
「この家には用はないはずだ。一応の忠告! それだけでいいのだ。聞くか聞かないかは彼女にある。……贋金であろうと本物であろうと、私には大して関係はない」
 で、私は下宿へ帰った。

 数日経った新聞に、次のような広告が掲げてあった。
「銀二十九枚の送主に告げる。貴女は非常に聡明であった。イスカリオテのユダを残し、後を郵送してよこしたことは、我等をして首肯せしめ微笑せしめた。安心せよ。危害を加えず」
「ついに彼女は郵送したと見える。イスカリオテのユダの付いた、一枚の貨幣を送らなかったのは、以前売ったからに相違ない」
 とにかく私はホッとした。
「だが彼女は貧乏になった。もうあの家には住めないかもしれない」
 ある日私は
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