弓道中祖伝
国枝史郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)世話《せわ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)武者|草鞋《わらじ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#歌記号、1−3−28]
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1
「宿をお求めではござらぬかな、もし宿をお求めなら、よい宿をお世話《せわ》いたしましょう」
こう云って声をかけたのは、六十歳ぐらいの老人で、眼の鋭い唇の薄い、頬のこけた顔を持っていた。それでいて不思議に品位があった。
「さよう宿を求めて居ります。よい宿がござらばお世話下され」
こう云って足を止めたのは、三十二三の若い武士で、旅装いに身をかためていた。くくり袴、武者|草鞋《わらじ》、右の肩から左の脇へ、包を斜《ななめ》に背負《しょ》っていた。手には鉄扇をたずさえている。深く編笠をかむっているので、その容貌は解《わか》らなかったが、体に品もあれば威もあった。武術か兵法かそういうものを、諸国を巡って達人に従《つ》き、極めようとしている遊歴武
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