む。またある意味では憐れんでもいる。……嫉妬! そうだ、その嫉妬が、一切お前を眩ませたのだ。そのくせどうだ、お前自身は? 好色そのもののような生活だったではないか! 俺は随分我慢した。最後まで我慢したといってもいい。そうしていまだ[#「いまだ」に傍点]に我慢している。……永い間の受難だった。いや、いまだに受難なのだ。俺ばかりではない。娘もだ! それをさえお前は餌にした。嫉妬の餌に! お前の嫉妬! ……だが俺は守って来た、お前の意志を守って来た! もちろん素晴らしい財産の、継承のためには相違ないが、それより一層俺としては、娘の幸福を願ったからだ。というとお前はいうかもしれない、『その娘が!』『その娘が!』と! ……が、俺はハッキリという、娘は要するに娘だと! それ以外には意味はない! それへ疑がいをかけるとは! それでも母か! それでも妻か! ……もちろん、彼女はよい娘だ。愛すべき娘には相違ない。で俺は愛したのだ。だがその愛は純なものだ。お前が『あいつ』を愛したそれと、どうして比較出来るものか! 『あいつ』は実に悪人だ。『あいつ』はその後手を変え、品を変え、我々二人を迫害した。そうして今
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