まっているではないか……オッ、足音!」
と耳を立てた。
シトシトと足音が聞こえて来る。だが姿はわからない。木立を縫って来るからだろう。
不意に足音が消えてしまった。
と思った時また聞こえた。
「はてな?」と呟いたのはその足音が、二手に別れたからである。
三人ずつ二手に別れたらしい。こちらの方へ三人が来、母屋の方へ三人が、築山を巡って行くようである。
「いよいよ来るか」
と旗二郎、建物の角へ背中をつけ、太刀を中段、堅固に構え、奥歯を噛みしめ呼吸をととのえ、一心に前方をすかして見た。
だんだん足音が近づいて来る。だがまだ敵の姿は見えぬ。
すると忽然、太刀打ちの音! 築山の方から聞こえて来た。
チャリーンと一合! つづいて数合! それに続いて数声の悲鳴! 向こうへ向かった敵を相手に、味方の三人が切り合ったらしい。
「ウム、やったな! どうだ勝負は? やっつけたかな? やられたかな?」
旗二郎の全身はひきしまった。「出ろ出ろ出ろ! こっちへも出ろ!」
ブルッと武者顫《むしゃぶる》いをした時である。前方の繁った木立を抜き、颯《さっ》と走り出た人影があった。
三人の覆面の武
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