うやら不思議に思ったらしい、五人ヒソヒソ囁き出した。
 と、キラキラと光り物がした。
 五人ながら刀を抜いたのである。
 それが月光を刎ねたのである。
「オイ」と一人の声がした。
「うむ」と答える声がした。
「やられたらしい」ともう[#「もう」に傍点]一人の声。
「島路と、そうして大里だ」
「そうらしいの」ともう一人。
「敵に防備《そなえ》があるらしい」さらにもう一人の声がした。
 と、一人が振り返った。「味方両人してやられてござる。……いかがしましょうな、花垣殿?」
 すると門外から返辞がした。
「防備あるのがむしろ当然。……よろしい拙者も参るとしよう。……六人同時に切り込むといたそう」
 すぐにもう[#「もう」に傍点]一つの人影が、土塀の上へ現われた。
 同一の覆面である。
「では」
 というと飛び下りた。
 六人一緒に集まったが、二つの死骸を調べ出した。
 木影で見ていた旗二郎、「これはいけない」と考えた。「六人と一人では勝負にならぬ。引っ返して屋敷の人達に、このありさまを知らせてやろう」
 そこで物音を立てぬよう、彼らに姿を見せぬよう、背後《うしろ》下がりに退いた。数間来た所で
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