「はっきりご返辞してくださいまし」
四
ここに一人の武士があった。
微禄ではあったが直参であった。といったところでたかが御家人、しかし剣道は随分たっしゃで、度胸もあれば年も若かった。悪の分子もちょっとあり、侠気もあってゴロン棒肌でもあった。名は結城旗二郎、欠点といえば美男ということで、これで時々失敗をした。
「アレーッ……どなたか! ……助けてくださいよーッ」女の悲鳴が聞こえて来た。
お誂え通りわる[#「わる」に傍点]が出て、若い女をいじめているらしい。
「よし、しめた、儲かるかもしれない」
で、旗二郎駈け付けた。
案の定というやつである、ならずもの[#「ならずもの」に傍点]らしい三人の男が、一人の娘を取りまいていた。
「これ」といったが旗二郎、「てんごう[#「てんごう」に傍点]はよせ、とんでもない奴らだ!」
「何を!」
と三人向かって来た。
「何をではない、てんごう[#「てんごう」に傍点]は止めろ」
「何を!」
と一人飛び込んで来た。
「馬鹿め!」
と抜いた旗二郎、ピッシリ、平打ち、撲《は》り倒した。
「野郎!」
ともう一人飛び込んで来た。
「
前へ
次へ
全51ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング