訊《き》くぞ。答えろよ」大男はニヤリと笑った。
「使えば使うほど殖えるものは何んだ?」
「へん、べらぼうめ。そんな事か。他でもねえ人間の智恵だ。さあドシドシ訊くがいい」紋太夫は大得意だ。
「形がなくて声がある、早く走るけれども足がない。これは何んだ、当てて見ろ」
「いよいよ益※[#二の字点、1−2−22]愚劣だな。それは風と云うものだ。さあ何でも訊くがいい」
「だんだん肥えてだんだん痩せる。死んでも死んでも生まれるものは何んだ?」
「智恵のねえ事を訊きゃあがるな。それはな、空のお月様だ」
十四
「さあ今度は貴様が訊け」大男はとうとう我を折った。
「よし訊くぞよ、答えるがいい。……大きくて小さく、形あって形ない。これは何んだ? さあ答えろ!」
紋太夫は大喝《だいかつ》した。
「むう」と云ったが大男は返辞をすることが出来なかった。
「どうだ?」と紋太夫は嘲笑い、「返辞が出来ずば関を通せい」
「仕方がねえ。通るがいい」
大男は片寄った。そこを眼がけて駈け抜ける。
「大きくて小さく、形あって形なし、――どうも俺には解らねえ。いったいこれは何者だな?」
大男は訊いたもの
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