前方に丘が見えた。そこに土人が集まっている。
「打て!」とホーキン氏が令を下した。と同時に火蓋《ひぶた》が切られ白煙りがパッと立ち上がり木精《こだま》が四方から返って来た。
三人の土人が地に仆《たお》れた。あわてふためい[#「ふためい」に傍点]た余《あと》の土人は仆れた土人を抱きかかえ忽ち丘から見えなくなった。
「左へ!」とホーキン氏が号令を掛けた。
全軍素早く左へ走り、敵に位置を知られないようにした。
突然その時|背後《うしろ》にあたって異様な叫び声が湧き起こり、同時に毒矢が降って来た。案内知った土人軍は早くも背後《うしろ》へ廻ったと見える。
「止まれ! 伏せ!」とホーキン氏は勇ましい声で命令した。部下達はバタバタと地へ伏した。そうして後方《うしろ》をすかして見た。
土人の姿がチラチラ見える。いずれも刺青《ほりもの》で肉体を飾りそのある者は鳥の羽根を附け、そのある者は髑髏《どくろ》を懸け、そうしてほとんど一人残らず毒矢を入れた箙《やなぐい》を負い、手に半弓を握っている。
「随意打て!」とホーキン氏は、全軍に令を下して置いて自分も銃の狙いをつけた。
パン、パン、パンという小銃
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