、土人の斥候が早くも見附け、ピューッと鋭い笛を吹いた。するとその笛は他の笛を呼び、さらにその笛は他の笛を呼び、次々に吹き継いで、土人部落へ報告したらしい。
 海岸へ上がるやホーキン氏は直《ただ》ちに部下を一所《ひとところ》に集めた。
「土人を殺すが目的ではない。彼らを威嚇し降参させ、財宝を発見《みつけ》るのが目的である。鉄砲は是非とも打たねばなるまい。しかし急所は避けるがよい。戦闘力を失わせる! これが最も肝心である。……では諸君進もうではないか! 土人は毒矢を射るであろう。木立ちを楯に進むがよい」
 まだ言葉の終らぬうちに、一斉に毒矢が降って来た。
「林の中へ!」とホーキン氏は云った。
 遠征隊は一散に林の中へ飛び込んだ。棗椰子《なつめやし》や山毛欅《ぶなのき》や棕櫚《しゅろ》の木などに蔽《おお》われて林の中は暗かった。
「散って!」とホーキン氏が叫んだので密集していた部下の者は二間の隔《へだ》てを置きながら左右へ翼のように拡がった。
 毒矢は今は飛んで来ない。土人の姿も見ることは出来ない。全軍|粛々《しゅくしゅく》と進んで行く。
 深い林が浅くなり日光がキラキラ射し込んで来た。遙か
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