うな様子は、部下の者達を皆泣かせた。獅子であろうと虎であろうとビクともしない大冒険家も、肉親の情には堪えられないと見え、顔も上げえず咽《むせ》んでいる。
その時、遙か北の方から、大砲の音が聞こえて来た。
一同は驚いて耳を澄ました。
するとまた一発聞こえて来た。
にわかにホーキン氏は奮い立った。
「ドームへ!」
と一声号令を下すと、元来た方へ一散に、先頭に立って走り出した。
ドームの露営地まで来て見ると、別に変わったこともない。天幕《テント》もそのまま立っている。捜索隊も帰って来ている。北へ向かった一隊だけがまだ帰っていなかった。
ものの半時間も経った頃その一隊も帰って来た。
そうして彼らは云うのであった。
「異形の軍船《いくさぶね》が五隻揃って湾を静かに上《のぼ》って行きました」と。
「大砲の音は?」
とホーキン氏が訊いた。
「やはり異形のその軍船から打ち出したものでございます」
「どこへ向かって打ったのか?」
「島へ向かって打ちました」
「チブロン島へ向かってか?」
「はい、さようでございます」
「ふうむ」
とホーキン氏は考え込んだ。解らないのが当然である。日本と
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