率し、海岸に添って南の方へ飛ぶようにして、下って行った。
行けども行けども密林である。眼を覚まされた鳥や獣がさも怒りに堪えないようにけたたましい鳴き声を響かせ時々一行に飛び掛かって来た。サーッサーッサーッサーッと生い茂った雑草を分けながら隊の行く手を横切るものがあったが、云うまでもなく大蛇である。
一時間あまりも走った時、一行は小広い空地へ出た。
と、ホーキン氏は立ち止まった。
「しまった」
と小声で叫びながら空地の一所へ走って行き体を曲げ手を伸ばし地上から何か拾い上げたが、松火の火ですかして見ると、
「やっぱりそうか! もう駄目だ」
こう云って愁然と眼を垂れた。拾い上げたのは小さい帽子で、紛《まご》うべくもないジョンの物だ。
帽子に着いている血の染《しみ》と、急拵えの石の竈《かまど》と、その傍《わき》に落ちていたセリ・インデヤ人の毒矢とを見れば、ジョン少年の運命は知れる。チブロン島の土人どもが、こっそりここへ上陸し、竈を作り焚火を焚き、遠征隊の動静を密《ひそ》かに窺っていたところへ、ジョン少年がやって来たのだ。そうして殺されて食われたのだ。
ジョージ・ホーキン氏の悲しそ
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