な変なことを云い出した。
「俺は最近にお暇《いとま》するぜ」
「お暇ですって? 何のことです?」
 来島十平太が不思議そうに訊いた。
 しかし紋太夫はそれには答えず、
「首にさわっちゃいけないよ、首にさわっちゃいけないよ」
「ええええ、首になんかさわるものですか」
「ところで」紋太夫はまた云った。「人間の意志っていう奴は、実に生命《いのち》より強いものだね」
「ははあ、さようでございますかな」十平太は怪訝《けげん》そうに答えた。
「どうも近来首が痛い」
「それはどうも困りましたな」
「ナーニ、ちっとも困りゃしないよ。所期の目的はとげたんだからな」
「所期の目的とおっしゃると?」
「チブロン島の宝庫発見よ」
「それなら充分にとげられましたとも」
「で、首が痛くなったのさ」
「あなたの云うことは解らない」
「本来俺は住吉の浜で首を切られた人間だよ」
「…………」
「意志は強し! 生命《いのち》より強し!」
 彼は愉快そうに哄笑した。

 それから間もなくのことであったが、彼の首がポッカリ外れた。しかし一滴の血も出なかった。その切り口もスベスベしていた。
 その顔もひどく愉快そうであった。島
前へ 次へ
全113ページ中112ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング