大勢が、弔いの歌を歌っておりました。はい、弔いの歌を歌っておりました。(間)そして、間もなく高殿へは魂を祭る青き燈火が点ぜられ、葬いの鉦がつきなされたのでござります。(と窓より音楽堂の方を眺め)あれ、ごらん遊ばせ、今音楽堂の表門から海岸へ向けて白き柩を真先に、騎士、音楽家や小供等の列が悲しみ嘆いて出て参ります。あの一列は海岸から小舟に乗ってこの館へ来るのでござります。(一同窓より外を見る)
使女A ああ、ほんとに今度こそ、白い葬式の一列が音楽堂から出て参ります。
使女B 首を垂れて、遅く遅く歩く様子は、何んと云う物あわれな果敢《はかな》い姿ではござりませぬか。
女子 あの真先に小さく見える白い色のかけ[#「かけ」に傍点]衣《ぎぬ》は、柩を包んだ経帷子《きょうかたびら》か?
従者 (耳を澄まし)弔いの鉦を通して、小供等の歌う挽歌の節が……挽歌の節が聞こえます。
(挽歌聞こゆ)
使女A ほんにまあ物あわれな、亡き魂を祭るあの挽歌の節は。……この世の人が聞くに堪えない調《しらべ》でござります……聞くに堪えない節でござります。
使女B 挽歌につれて葬式の列が、浜辺の砂へ立ち並びました。(浜辺に
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