作って夜を海上で遊びます。あれごらん遊ばせ、二三羽|羽搏《はばた》きをしたので水煙が銀砂のようにパット空に昇りました。
女子 いえいえ悪い兆です。どうやら死んだ屍を送って行く柩の舟に見えるじゃないか。
使女A あれまたお嬢様は気味の悪いことをおっしゃります。何んであれが葬式の柩でござりましょう。水鳥が連らなって泳いでいるのでござります。
(空にて大鳥の翔《か》くる音)
女子 (空を見上げ)あの恐《こ》わらしい音は?
使女B ダイヤナの五六羽が空を翔けたのでござります。あの鳥が空をかける時は、ほんに星が飛ぶように素早くて、そして嵐のような恐い羽音を立てまする。
女子 空を翔けて何処へ行くのだろうね。
使女A 寒い北の国へ。
女子 (卒然と)その国では沢山の人が死ぬのじゃないかえ。
使女B (Aと顔を見合わせ)お嬢様!
女子 (悲しげに)死んだ人の魂を送りに行くのじゃないのかしら。
使女A もうお嬢様、窓から覘《のぞ》くのはお止め遊ばしませ――何んだか今夜も昨晩のように魔でもさしそうな晩でござります。――早く御寝間へおはいりなされてお眠り遊ばしませ。
女子 (悲しげに)どうして私が眠られる
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