もお客様も、皆お待ちかねでござりますれば、早く御出で下さるよう。
公子 (頷きて)おお、それはそうありそうなこと。(女子に向かい)明日の贈物《かずけもの》の貴女のお顔を皆の者にお見せ下されて、贈物がどのように美しく気高く値《あたい》あるかをお知らせなされませ。(女子の手を取り)そしてその贈物を屹度手に入れて見せると云うて、天地の神々は愚か、母の魂にまで誓った一人の若者が、この館にいることをも皆の者にお知らせなされて下さりませ。(二人の使女に向かい)俺は残念ながら、明晩の競技までは誰にも面会は致さぬ決心故、さようお父上に申しくれい。(大いなる決心を見せ)あの月が沈むまで(と窓外の月を眺む)、死に行く人魚の歌を(と高殿を見)、あの高殿で弾くことにしよう。(と階上に昇り行く)
使女A さあお嬢様、皆様のお待ちかねの、酒宴の席へ参りましょう。
使女B そのお美しい御様子を、風流の方々へお見せ遊ばしませ。(と左右より手を取る。奥にて笑声)
女子 (取られし手を払い)私は奥へは行きはせぬ。
使女A それなら、どう遊ばすのでござります。
女子 (月を眺め)月の光に照らされて、この室にいつまでもいるつ
前へ
次へ
全154ページ中53ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング