れを崇拝するものにあらず。まず国民の任務を確認してこれに要用なるものを採択し、もって国政上の大旨を定むるものなり。自由主義は個人の賦能を発達して国民実力の進歩を図るに必要なり、平等主義は国家の安寧を保持して国民多数の志望を充たすに必要なり、ゆえに国家論派はこの二原則を政事上の重要なる条件と見做す。あえてその天賦の権利たりまたは泰西の風儀たるがゆえをもってするにはあらざるなり。専制の要素は国家の綜収および活動に必要なり、ゆえに国民論派は天皇の大権を固くせんことを期す。共和の要素は権力の濫用を防ぐに必要なり、ゆえに国民論派は内閣の責任を明らかにせんことを期す。貴族主義は国家の秩序を保つに必要なり、ゆえに国民論派は華族および貴族院の存立に異議を抱かず。平民主義は権利の享有を遍《あまね》くするに必要なり、ゆえに国民論派は衆議院の完全なる機制および選挙権の拡張を期す。個人の力を用いてあたわざるものには干渉もとより必要なり、国家の権を施して反りて害あるものには自治もとより必要なり。国民論派はあえて抽象的理論を藉《か》り、もって一切の干渉を非し、また一切の自治を是とするものにあらず。要は国民の統一お
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