滅し、あるいは秩序を紊乱《びんらん》し、しかして国民的統一を失えばなり。
〔第三〕国民論派は社会百般の事物についてのごとく、政治法律の上についても国民的特立を必要の条件となす。けだしこの論派はつねに史蹟を考量の中に算え各国民の間に制度文物の異同あることをば確認せり、しかのみならず強固なる国民はその一国民たるの表標として特別の制度を有するの至当なるを確認せり。このゆえに代議制度はもと泰西より取りきたるにもせよ、一旦これを日本に移植する上は必ずこれに特別の色容を付し、日本国民とこの制度との密着を図らざるべからず、これまた国民論派の他論派に異なるところの特性なり。元来代議政体は英国をもってその創立者となす。しかれどもこれを仏国に移したる後はついに仏国的色容を帯び、これを独国へ移したる後はまた独国的色容を帯ぶ。しかしてその代議制度たるゆえんに至りてはみな同じ、国民論派は立憲政体を日本的にして世界中に一種の制度を創成せんことを期するものなり。
   国民論派の内政旨義
 立憲政体に対する国民論派が他の論派と異なるところの諸点は以上に述べたるがごとし。要するに国民論派は単に抽象的原則を神聖にしてこ
前へ 次へ
全104ページ中99ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
陸 羯南 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング