理論を趁《お》いて軽々しく政体その他の変改を主張することは国民論派のあえてせざるところなり。何となればこの論派はいたずらに改革そのものを目的とするにあらず。しかしてむしろ改革より生ずべき結果を目的とするものなればなり。
〔第二〕国民論派は立憲政体をもって最終の目的となすものにはあらず。これまた他の政論派と大いに異なるところの一点なり。他の論派は進歩主義の名をもって立憲政の施行を主張し、自由主義の名をもって代議政の設立を主張す、しかれども国民論派は国民的任務を尽くさんがために国民全般にこの任務を負わしめんことを期し、この期望よりして代議政体の至当を認む。代議政すなわち立憲政は他の論派にありては最終の目的なれども、国民論派にありては一の方法たるに過ぎず。しからばその目的はいかん、いわく、「国民全体の力をもって内部の富強進歩を計り、もって世界の文明に力を致さんこと」これその最終の目的なり。ゆえにこの論派は国家または個人の観念を取りてその一方に偏依するがごときことあらず。国の情態に応じ国家の権力と個人の権利とを調和し、これをして偏依の患なからしめんことを期す。何となればその偏依あるいは自由を破
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