法制のごとき、裁判のごとき、兵馬のごとき、租税のごとき、およそこれらの事物はみな本来において国民全体に属すべきものとす。しかるに昔時にありてはかかる事物みな国民中の一部に任してその私領となせり。これ国民統一の実なきものなり。国民論派は内部に向かいてこの偏頗および分裂を匡済せんと欲す。されば国民的政治とはこの点においてはすなわち世俗のいわゆる輿論政治なりと言うべし、「天下は天下の天下なり」と言える確言をばこれを実地に適用し、国民全体をして国民的任務を分掌せしめんことは国民論派の内治における第一の要旨なりとす、この理由によりて国民論派は立憲君主政体の善政体なることを確定す。
国民論派と他の諸論派
〔第一〕国民論派は立憲政体すなわち代議政体を善良の政体なりと認むれども、その善政体たるゆえんはまったく国民的統一をなすの便法たるをもってなり。他の政論派はみないわく、「代議政体はもっとも進歩せる政体なり、文明諸国において建つるところの文明政体なり、十九世紀の大勢に適応する自由政体なり、ゆえに日本もこの大勢に応じて東洋的政体を変改すべし」と。国民論派もまたその然るを知る。しかれどもかかる流行的
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