第一に抱くところの観念にして、国政上の論旨はすべてこの観念より来る。国民論派はその目的をかかる高尚の点に置くがゆえに、他の政論派のごとく政治一方の局面に向かって運行するものにはあらず、国民論派はすでに国民的特性すなわち歴史上より縁起するところのその能力および勢力の保存および発達を大旨とす。されば或る点よりみれば進歩主義たるべく、また他の点より見れば保守主義たるべく、けっして保守もしくは進歩の名をもってこれに冠することを得べからず。かの立憲政体の設立をもって最終の目的となすところの諸政論派とはもとより同一視すべからず。これすなわち国民論派の特色なり。
   政事における国民論派の大要
 国民的政治〔ナショナル・ポリチック〕とは外に対して国民の特立を意味し、しかして内においては国民の統一を意味す。国民の統一とはおよそ本来において国民全体に属すべきものは必ずこれを国民的《ナションナール》にするの謂なり。昔時にありてはいまだ国民の統一なるものあらず、そのこれあるがごときはただ外観に過ぎずして、さらに実相を見れば一種族・一地方または一党与の専恣たることを免れざるなり。帝室のごとき、政府のごとき、
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