よびその進歩を期するに外ならず。個人主義を取るものは国家は個人のために存すと主張し、国家主義を取るものは個人は国家のために存すと主張す。二者ともに旧時の迷想を争うに過ぎず。国民論派は個人と国家とを并立してはじめて国家の統一および発育を得るものとなせり。すなわち国民の事情に応じてこの二者の伸縮を決し、理論上の伸縮いずれにあるも国民の事情に適応するかぎりはその実際上の結果はすなわちみな同一なればなり。
   国民論派の対外旨義
 国民論派の内治に係る旨義は大概かくのごとし。今その外政に係る大要を吟味せん。国民論派は第一に世界中各国民の対等権利を識認するものなり。個人に貧富賢愚の差あることは実際上免れがたし、しかれどもその実際上の差等あるにもかかわらず、個人自身よりしては自ら侮りて卑屈の地に立つべからざるなり。該論派はこの自負の感情をもって一国民にも存すべきものとなす。各国民みなその兵力富力に差等あるは事実なり、日本国民は欧州の諸国民に比して貧弱たることを免れず、しかれども一国民として世界に立つの間はこの無形上の差等に驚きて自ら侮ることを得ず。この点において国民論派は内治干渉の嫌いあるものに
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