対ししばしば痛く反対をなしたり。国民論派の主持するところの国民的特立なるものは必ず国民的自負心を要用となす、ゆえに国民的自負心はけっして不正当の感情にあらざるのみならず、これなければ一国民たるものの存在を明らかにするあたわざるなり。しかして世界の文明はこの国民的自負心の競争より起こるものというも不可なかるべし。されば国民論派は日本の比較上貧弱なることを知らざるにあらざれども、この差等を別問題として国際上の対等権利は一日も屈辱すべからずとなし、一旦不幸にして屈辱したるものはこれが回復を一日も忘るべからずとなす。これを要するに他の政論派は欧米諸国民の富強をもってその人種固有の能力に帰し、とうてい東洋人種の企及すべきにあらずと断ずれども、王公将相いずくんぞ種あらんや。国民論派は一国民自身の位地よりして、またその本分よりしてかの自然的優劣論をば痛く排斥するものなり。
   国民論派の発達
 国民論派は実に欧化風潮に反対して起こりたり。しかれどもこの論派はただに欧化風潮を停止することをもって満足するものにあらず。なお進んで日本の社交上および政事上に構成的論旨を有するものなり、されば国民論派は一時
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