の反動的論派にあらずして、将来永遠に大目的を有するところの新論派と言うべし。彼もとより自由の理を識認す。しかれども自由なるものは智識の進歩に応じて存することを信ず。彼もとより平等の義を識認す。しかれども平等なるものは道徳の発育とともに生ずることを信ず。智識は自由の本なり道徳は平等の源なり、自由の理明らかに平等の義立ちて、しかして国民的政治は全きを得。自治の能なきものは人に治められざるを得ず、自営の力なきものは他に制せられざるを得ず、自由は智識の進歩して固有の能力を用ゆるものほど多くこれを有す。貴賤の間に礼譲存し貧富の交に敬愛行なわれ、しかして後にはじめて平等の義、国民一致の実相を見るべし。国民論派はこの点よりして教育の要件たることを信ず。さきに国民論派のはじめて世に現われたるは『日本人』においてし、次にこれを発揚するにあずかりたるものはわが『日本』これなり。当初世人はその言論のすこぶる世の風潮に逆らうのはなはだしきをもって、あるいはこれを攘夷論と罵り、あるいはこれを鎖国説と嘲り、目するに排外的激論の再生をもってしたり。かつ固陋にして単に旧物を慕うの論者は一強援を得たるがごとくに感じ、争
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