輩はこの標準によりて本編を起草せり、ゆえに当時に在りて自ら政論家をもって居らざる人といえども、その説の多少政論に影響を及ぼしたる者は、あえて収めてもって一政論派の代表者となす。家塾を開きて業を授くる者あるいは必ずしも政論を教ゆるにあらず。しかれどもその門人にして政論に従事するあれば、これを採りて一の政論派となす、著書を出版して世に公売する者あるいは必ずしも政論を弘むるにあらず、しかれどもこの著書にして政治思想に感化を及ぼしたるあれば、これを採りて一の政論派となす、講談会を開き新聞紙を発する者必ずしも政論をもっぱらとするにあらず、しかれども世の政論に影響を及ぼしたるの跡あるものはこれを採りて一の政論派となす。しかしてかの自ら政党と称し政社と号するもののごときはもとより一の政論派たらざるべからず、思うにその目的は政論を弘めて人心を感化するよりも、むしろ一個の勢力を構造して諸種の欲望を達するにあるべし、しかれども吾輩はその裏面を見ることをあえてせず、ただ生平その機関たる新聞雑誌に言うところの政議を採りてこれを一の論派と見做《みな》し去らんと欲するのみ。
西人の説を聞き、西人の書を読み、ここ
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