してこれを取る。しかして進歩または自由のはたして何物たることははじめよりこれを講明せず。自ら保守論派と称するものはかのコンセルワチズムに倣うものなるや否や、吾輩これを知らざるなり、彼すでに保守というもの思うに必ずその実あらん。近時社会の風潮は滔々として改革に赴く。この時に当たりて「保守」なる名称は世人おおむねこれを忌避す。ひとり世俗の毀誉を顧みずしてあえて自ら保守の称を取るものは実に保守中正論派をもって然りとなす。
世に奇傑の士あり、鳥尾得庵先生これなり。先生気高くして識深し。才文武を兼ねてしかして久しく時に遇わず。近時人もし晦跡《かいせき》の英傑を談ずれば必ず指を先生に屈す。先生つねに世運の衰替を慨し、かつて二、三子と大道協会なるものを興して儒仏の真理を講ぜんことを計る。これを先生近来の事業の端緒となす。すでにして世運正に欧化時代に際す、先生ますます回瀾《かいらん》事業の必要を感じ、まさに大いに道を弘めて時弊を匡救せんとす、当時政論の中衰せるに会し、欧化主義に反対して政論を立つるものは自ら政府の敵視するところとなり、政論社会は窃《ひそか》にこの論派の激烈なるを危ぶみ、なお第二期にお
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