とんどこれなきを常とす。政論の部類は泰西の学者その傾向につきてこれを四種に分かつ。すなわちラジカリズム〔急進論派〕、リベラリズム〔進歩論派〕、コンセルワチズム〔保守論派〕、アプソリュチズム〔守旧論派〕、この四種のものは学問上において区別するところの種類なり。いかなる論派といえどもはじめより自らこの部類を選みてその名称を取るものにあらず。その信ずるところの真理を主張して政論壇上に登る時は、批評家その傾きを見てこれに名称を付することこれその常例なり。今やわが国の政論派はすなわち然らず、その政論を唱うるや、まず自ら学問上の区別を見てその名称を選び、その名称に応じてその説を立つるもののごとし。ゆえに名称のために拘束せられてその信ずるところの真理を主張するあたわず、あるいは真理を主張してかえってその名称と齟齬《そご》するものあり。名を先にして実を後にす。ああまた奇なりと言うべし。かのリベラリズムに倣い進歩または自由の名称を選むものを見よ、彼すでに進歩と言う。ゆえにいやしくも進歩の名に反することは善となく悪となくこれを排斥す。彼すでに自由と言う。いやしくも自由の名を有することは利害邪正の別を論ぜず
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