派において皇道と称するはすなわち日本古代の慣例中かの官職世襲のことを指すがごとし、国に功労ある者は高位高官に上ること当然なり、その勢力をもって政府を立つること当然なり。民権自由の説のごときは日本に唱うべからず、以上は皇典論派の大意なるがごとし。さればこの論派は一の強大なる藩閥論派にしていわゆる最近の保守論派と見做すの価あり。今日にありて保守論派として算うべきものはまず指をこの論派に屈せざるべからず。然れどもこの論派は西洋に倣いたる法典編纂をもって至当のこととなす。これはなはだ奇たりと言うべし、この点においては自治論派と相和し、しかして他の諸論派よりは強大なる反撃を受く、いずれにしてもこれらは政論としての価はなはだ低しと言うべし。しかれども今日にありて保守論派の本色を保つものはこれよりいちじるしきはなく、将来に至りても保守主義を残すものはこの論派ならん、しかしてこれに次ぎて保守の傾きあるものはかの保守中正論派を然りとなす。吾輩は次章においてこれを略叙せん。
第五 保守論派〔保守中正論派〕
およそ論派の名称は大抵みな批評家のくだすもの多し、我は何種の論派なりと自ら名のる者ほ
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