ども吾輩はこの新論派を叙するに先だちて名称の新しき他の三論派すなわち大同論派、自治論派、皇典論派を略説せんと欲す。この論派がいかなる主義を保有するかは吾輩これを知るあたわずといえども、その政論上における傾向はややこれを窺うことを得べきなり。請うその大略を吟味し去りて相互の関係を明らかにせん。
第二 大同論派
大同論派は自由論派よりきたるものなるや明白なり。しかれどもその旨とするところはただ藩閥政治を攻撃して政党政治を立つるにあり、しかしてこの目的を達するには理論上の異同を棄てて事実上意見の大同を取るべからずと言うにほかならず。かくのごとくその論基はただ現実的問題にあり、これをもって一の論派として算するにはすこぶる難し。もし強いてこれが理想を探らばやはり自由論派の思想と同一ならんのみ。されば吾輩はここに理想を探ることをなさず、単にこの論派の傾きが当時いずれの論派に近かりしやを一言せん。彼実に自由論派よりきたる、ゆえにその傾向は自由論派を近しとすることこれ自然なり。しかれども自由論派の深奥なる理想は彼毫もこれを継承せざるのみならず、かえってこれに反対したるがごとき傾向あり。
前へ
次へ
全104ページ中78ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
陸 羯南 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング