七、八年より二十年に至るまでの事情にして、吾輩これを欧化時代と称すべし。第三期の政論派が第四期に移りたるは実にこの時代にあり、この期の政論状況を汎叙すれば誠に奇怪なる変化を見るに足るべし。いかに変化せしか、いわく第三期において保守派とまでに称せられたるかの帝政論派は一変して欧化論派となれり。いわく前期の激進派たる自由論派はこの時において反りて保守論派となれり。いわく改進論派の一部は欧化論派に傾き他の一部は保守論派に傾きたり、これ豈に政論の奇変にあらずや。
 もし文明進歩と言えることを解して泰西風に変化することとなさば、当時の政府ほど「進歩主義」なりしものはいまだこれあらざるなり。もし進歩主義と言えるものがただ泰西の事物または泰西の理論に模倣するの主義を意味するならば、今の進歩主義と自称する論派は当時にありて双手を挙げて政府の方針を賛頌せざるべからざりしならん。しかるに自由論派または改進論派は毫も賛成を表せざるのみならず、反りて痛くこれに反対したり、しかして「保守主義」と呼ばれたる帝政論派の遺類、たとえば『東京日日新聞』のごときは大いに政府を賛助したることこれはなはだ奇なりと言うべし。人
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