して痛くこれを攻撃せり、この点においてはかの自由論派とやや相反すと言うべし。
 しかれども経済論派は人類の平等を認めて深く貴族主義には反対せり。思うに人為の階級特権は自由競争の原則に反するをもってなり、この点においては自由論派とはなはだ相近くして一種のデモクラシック派と言うべきところあり。しかれども自然の階級すなわち貧富の懸隔をば社会の常勢、むしろ国富発達の正当なる順序としてこれを是認し、反《かえ》りて資本の分散を国富進歩の妨害とまでに説きたり、この点においては改進論派と近くして自由論派と遠かりき。自由論派は無上政治をもって国際的紛争を防がんと希望したるがごとく、経済論派は自由貿易主義をもって世界の一致和合を謀らんと希望す。この理想は自由論派とやや同じきの姿ありといえども、経済論派の眼中には国権の消長を置かずして、単に財富の増減を目的となす、けだし自由論派は国権を鞏固にせんがために無上政法を主張するも、経済論派はむしろ国権をもって世界進歩の妨害となし、しかして自由貿易を唱うるものなり、ここに至りて自由論派と相反して改進論派の一種と相合し、かつ改進論派中保護貿易派とは相反するを見る。
 
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