法学論派に至りてはすなわち国権論派の胤流として、おもに国法の改良を目的とし、かつ泰西における近世法学の歴史的思想に感染するところの改革論派なり。この論派にいちじるしき点はすなわちこの歴史的思想にしてその結果としては他の自由・改進の両派に反対し、むしろ帝政論派と相近くして漸進主義を取るものに似たり。しかれども帝政論派のごとくに現実的利害のみには固着せず、権義に係る理想よりして国家の権力と個人の権利とを両《ふたつ》ながらこれを認め、かの仏国の革命主義を攻撃しつつ一方には国家権力の鞏固をもって個人の権利を保護することを説くものなり。彼かつて法理の上より主権在君論を主張し、もって帝政論派の主義を賛助したるは当時にありてすこぶるいちじるしきものあり。彼かつて法理の上より君主政体の正しきを説き、共和主義の臭味を排斥せんと試みたり、彼かつて天賦人権論を説きて世の純理民権説に反対したり。しかれどもこの論派は経済論派に比すれば反りて熱心を欠き、いまだ世人に対してその主義の全豹を示したることあらず、思うに英国風の法学者はまったく政界と相隔離し、政論派としては経済学者に比して大いに譲るところあり、当時日本の
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