論派をもって専制論派または守旧論派となすことはなお自由論派を破壊論派または共和論派となせしがごときのみ。然りといえども大圜線《だいかんせん》の一断片を取りこれを枉《ま》げて別に一小圜を作るは論派の弊なり、自由論派が「主権在民」の理を唱道せしかば帝政論派もまた自ら進んで空理の競争場に入り、あえて「主権在君」の説を唱えこれに反対したり。ここにおいて改進論派はその中を執りて「主権在君民」の論を立て一方に自由論派の急激を排し、他の一方には帝政論派の守旧を撃ちたり。しかして帝政論派はこれより民間風潮の逆流に置かれて一の守旧論派と見做さるるに至れり、けだしその自ら取るところの過ちなりと言わざるべからず。
帝政論派は大なる欠点を有せり、彼その論旨を世人に知らしめんとするよりは、むしろ他の論派に反対してこれを防御せんとしたり。言わば彼帝政論派の熱心は進撃的にあらずして防守的にあり、しかして防守の熱心は彼をして藩閥政府に対する攻撃をも防御せしめたり。彼すでに十五年の聖詔にしたがって立憲政体を是認したり。立憲政体の義においては取りも直さず責任内閣を包含せり。しかして藩閥内閣なるものの義においてはいかに弁
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