護の労を取るも強者の権利または戦勝者の権利もしくは軍人政治の意を存せざるべからず、該論派のこれを弁護したるは実にその賛成するところの立憲政体の義に撞着せり。帝政論派はかの改進論派とともに急激の改革を攻撃して秩序的進歩を主張せり。その藩閥内閣を弁護せしは、けだし秩序的進歩を主張するがためならんか、しかれどもこれ大なる過失なりき、秩序的進歩とは貧富智愚の差を是認する自由的競争および貴賤上下の別を保持するの匡済的改革を言うのみ、けっして強者の権利、戦勝者の権利または軍人政治の類を許容するものにはあらず。
帝政論派は藩閥内閣を弁護して「政権は口舌をもって争うべからず、実功をもって争うべし、死力を出して幕府を仆《たお》したる者がその功によりて政権を握れり、これを尊敬するは人民の礼徳なり」とまでに立言せり、これ政権を一種の財産のごとく見做したるの説なり。功を賞するに官をもってすることを是認したるなり、帝政論派の欠点実にこれよりはなはだしきものあらず。しかれども当時他の二論派が主張するところの議院内閣すなわち一名政党内閣と言えるはいかなる意義を有せしか、世人一般はいかにこれを解せしか、これ一の疑問
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