上の説を人民の旧思想を喚起したるがごとく、改進論派は経済上の説をもって人民の政治思想を養成したるやその功大なりと言わざるべからず、立憲政体のため民間に施したる準備の功績は吾輩けっしてその自由論派に譲らざることを断言せん。かつ日本において発達したる政論派中当時に至るまでいまだこの論派より充実したるものはあらず、学理と実際とに照らしてその説を立てしかして首尾不同前後撞着の弊少なかりしは、実にこの論派を然りとなす、改進論派の吟味はここに止め、吾輩はこれよりかの帝政論派なるものの大要を吟味せん。

     第六 帝政論派

 自由論派は抽象的自由を信じてこれをわが国に拡張し、ついに東洋の旧習を一洗せんとするの大望を抱きたり。この論派こそ実に世人の旧思想を警醒し人類の平等を喚起したる奇特の論派なれ、吾輩はその詭激急躁《きげききゅうそう》なるにもかかわらずこの点においては該論派の功績を認む。この論派に次ぎて起こりたるはかの改進論派なりといえども、これ自由論派に反対せしにはあらず、むしろ政治の現状を攻撃する点においてはほとんどその朋友なりき、すなわち立憲政体建設の催促においてまったく同一の方面に立
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