も平和的進歩を主眼となす、ゆえに内治については急激改革の害を論じて秩序的進歩を主張し、外政については国権の拡張を後にして通商的交際を要務としたり、けだし破壊と戦乱とは経済世界においてもっとも悪事とするところなればなり。
 自由論派はその論拠をつねに義理の上に置き、ただ人類を見て種族《クラツス》を見ず。しかして改進論派はもっぱら便益をもってその標準となし、社会に現存する自然の種族をばみなこれを正当視したり、この点においては改進論派はかの自由論派の理想主義に反対して一の現実論派なり。自由論派はただに日本人民の自由を希望するに止まらず、この自由のためにはまず国権を拡張し、延《ひ》きて東洋全体に自由主義を及ぼし、ついに世界各国に政法を立てんと希望したるは板垣氏の『無上政法論』に明らかなり、しかして改進論派は人智の劣等国力の微弱を自信し、なるべく国際関係を避けもって内治の進歩を主張し国権の消長をば後にしたり、この点においては該論派は海外に対して一種の保守論派なりき、以上はその自由論派と著しく相違せる大要にして第四期の政論界に至り大いに衝突を起こせしゆえんなりと思わる。然りといえども自由論派が権利
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