と何等の精神をもってこれを立つるものなるか、要するに強が弱を虐するを防ぐがためのほかあらず、しかるに今やかえって強が弱を虐するの精神をもって富かつ智なる者をして貧かつ愚なるものを圧せしむるの政をなすは豈にその大理に悖《もと》るのはなはだしきものにはあらずや〔大坂|戎座《えびすざ》板垣氏演説筆記〕。
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これによりてこれを見れば、自由論派は自由論派と言うよりはむしろ一の平民論《デモクラシー》派と言うべし、政府は秩序安寧を保つに止まらず、なお貧富智愚の間に干渉してその凌轢《りょうれき》を防がざるべからず。これ実に自由論派の本領にして改進論派と相容れざるの点ならんか。自由論派と改進論派とはともに欧州のリベラールより来たれり、しかして甲は平等を主として乙は自由を主とす、甲は現時の階級を排して平民主義に傾き、乙は在来の秩序を重んじて貴族主義に傾く、もって両論派の差違を見るに足り、またもって自由論派の本色を知るに足るべし。
第五 改進論派
改進論派は真に泰西のリベラール論派を模擬するものなり、泰西においてリベラール論派と称する者は中等の生活を権利の根源とし個
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