せり、彼自由の文字を尊重して干渉保護の語を忌むことは他の論派よりもはなはだ深し、ゆえに実際の利害いかんを問わずいやしくも干渉政略または保護貿易の類をも猶予なく排したるがごとし。
さらばかの言論自由のごとき、集会自由のごとき、信仰自由のごとき、ならびに自由教育のごとき、いやしくも文字に縁故ある事柄は彼これを主張すること他の論派に比して一層広濶にしてむしろ抽象自由を主張したり。彼ただに自由平等をもって旨義となしたるのみならず、主権在民の旨義もまたその抱懐するところに係る、その結果としてはかの改進論派とともに国約憲法を主張したり、この点は実に当時にありてもっとも大なる問題にして帝政論派すなわち当時のいわゆる保守論派といちじるしく反対せしところなり。然りといえどもこの論派は帝政論派が当時共和主義なりとまでに難じたるごとくにはあらず、彼自由主義を主張することかくまで広漠なりしも、あえてにわかに君主政を廃して共和政をなすの主義にはあらざりき、むしろその自由主義をもって君主政を維持せんと欲するのみ。
ただ自由論派の立言法は世人をして惑わしめたるものなきにあらず、板垣氏『尊王論』の大意に以為らく、
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