こりしもまたこれあるがためにほかならず。
 然りといえども立憲政体は当時聖詔すでにその設立を宣言したり。人民はこれを君主の徳義に帰しこれを君主の恩恵となししかして怪しまず。かの帝政論派なるものは実にこの君徳君恩を称賛してもって世道人心を誘起せんと試みたり。自由論派はこれに反してもっぱら自由の理、平等の理を唱道し、むしろ史蹟および現状を攻撃してただその信ずるところの道理を講じたるは、もって旧慣を攪破《かくは》するに足るもいまだ人心を誘掖するに充分ならざりき、要するに自由論派はこの点において一の純理的論派なり。すでに純理的論派なればしたがってその希望もまた理想界に向かいてはなはだ広し、彼他の論派とともに代議政体を希望せり、しかしてこの政体について希望するところは他諸論派よりも一層理想界に入ること深きは自然なりというべし。自由論派において代議政体と言えるは今日欧州諸国においても多く見るべからざる理想的政体なりき。彼自由平等の原則をでき得るだけこれに実行せんことを望みたり。彼貧富智愚によりて権利に差なきを説きもって普通選挙を主張せり、彼また貴賤老少によりて意向に別あるを排しもって一局議院を主張
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