ふえん》するあり、あるいはその反対の人あえて主唱者の意を※[#「酉+斗」、第4水準2−90−33]酌《しんしゃく》せずしてこれを誤解弁駁するあり、またあるいは小人姦夫がことさらにこれを誣《し》いて邪説なりと伝うあり。この誤解たるやまったくこの三者に出ずるものというべし。吾輩のさきに国民主義を唱うるや、人あるいはこれを評して鎖国主義なり攘夷主義なり頑固主義なりと罵れり、これなお該論派の自由主義を評して共和主義なり無君主義なり破壊主義なりと言いしがごときのみ、俗人の迷夢を警醒して正理を唱うものは古今となく東西となくみなかくのごときの困難あり、草して自由論派に至り吾輩は深くここに感ずるなきあたわず。
 君は君たらずといえども臣はもって臣たらざるべからず。君主の権威は無限なり、ゆえにその命令を奉ずる政府の権威も下民に対してはほとんど無限なり、下民のその上に対する服従もまたしたがって無限なり、この際ただ君相の道徳もってわずかに万民の権利安寧を保するに足る、もし暴君暗相ありて虐政を行なうときは万民のこれに対する手段はただ弑逆《しいぎゃく》放伐あるに過ぎず。以上は西人のわが東洋政事を評する大略なり、
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