言声高に叫んだ。それから突然又殺気だった断末魔の闘牛のように怖ろしい勢で駆け出し、一つ一つの家の大門を叩き廻り始めたのである。
「この内地人を救ってくれ、救ってくれ!」
彼は息をぜいぜいさせながら喚くのだった。そして又他の家へ飛んで行き大門を叩きつける。
「開けてくれ、この内地人を入れてくれ!」
又駆け出す。大門を叩く。
「もう僕は鮮人《ヨボ》じゃねえ! 玄の上竜之介だ、竜之介だ! 竜之介を入れてくれ!」
どこかで雷がごろごろと唸っていた。
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社
1999(平成11)年4月10日第1刷発行
底本の親本:「金史良全集 1[#「1」はローマ数字、1−13−21]」河出書房新社
1973(昭和48)年2月
初出:「文芸春秋」
1940(昭和15)年6月号
入力:kompass
校正:土屋隆
2010年1月26日作成
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