で云えば大きくした焼鳥屋とでも云いますかな。あのくだらない鮮人《ヨボ》連中から解放されたすがすがしい気持で、一つ朝鮮の酒でも嘗めてみませんか。全く大変でしたね」
新しくはいって来た男達二人は玄竜の傍へ立ち並んだ。こう云われている男は今まで彼等の後をぞろぞろとついて廻りながら、田中に先生先生とぺこぺこしていた朝鮮人の事大的な文学くずれ達のことに違いなかった。玄竜は警戒するように首をちぢかめた。
「それでもまあ面白いじゃないですか。あんな人達と会って話してみるのも……実際大陸の気分が出ましてね」
確かにこの勿体振《もったいぶ》っただみ声は田中に違いないぞと、玄竜ははっと耳を欹《そばだ》てた。
「おや、あなたはそれを本気で云うんですか」
と、案内役の男は大分不服らしげに叫んだ。「あなたは妙なところに又感心したもんですな」
「いや、それ程でもないんですけれど……だが実際にあの人達は自分で云っているように、文壇や劇壇等で相当活躍しているんでしょうかね」
「そうですよ、あの連中が一流どころですよ」と、せっかちになって先の男は事実を誣《いつわ》るのだった。「今度|鮮人《ヨボ》連中の作品が内地語
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