明るいところでは駄目だよ。舞踊は電気を消して暗い所でやるもんさ。先生は嫌いかい?」
「ううん、それはきっと素晴しいことだろうな。そう見れば君は体も実にいいぜ」私は夢想するように云った。
「先生も踊りがとても好きなんだ……」
私の目の前には、この異常な生れをもつ、傷めつけられ歪められて来た一人の少年が、舞台の上で脚を張り腕をのばして、渡り合う赤や青の様々な光を追いながら、光の中に踊りまくる像がちらついて見えた。私の全身は瑞々《みずみず》しい歓びと感激にあふれて来るのを感じた。彼も満足そうに微笑を浮べながら私を見守った。
「先生だって踊りを作ったことがある位だよ。先生も暗い所で踊るのが好きなんだ。そうだ。これからは先生と一緒に踊りを稽古しよう。うまくなったらもっと偉い先生の所へ連れて行こうな」私は何も作りごとを並べているのではなかった。私も一時は舞踊家になろうと思って創作舞踊を試みた覚えさえあった。
「うん」彼の目は青い星のように輝いていた。
(そうだ、近い中に協会の傍のアパートにでも移って行こう。そこで一先ず二人きりになるんだ)と私は自分に云い聞かせるのだった。彼がどうこれから豹変《ひ
前へ
次へ
全52ページ中49ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
金 史良 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング