感じた。それで私は驚いたようにいつもの様々な云いわけの理由を考え出そうとした。だがもはや駄目だった。
「偽善者奴、お前は又偽善をはろうと云うのだな」私の傍で一つの声が聞えた。「お前も今は根気が続かなくて卑屈になって来ているじゃないか」
私はびっくりし、それからさげすむように云い返した。
「卑屈になるまい、なるまいとどうして僕はいつもいきまいていなければならないんだ。それが却って卑屈の泥沼に足をつっ込み始めた証拠ではないか……」
だが私はしまいまでを云い切る勇気がなかった。今まで私は自分がすっかり大人になっていると思い込んでいた。子供のようにひがんでもいなければ、若者のように狂的に××してもいないのだと。だがやはり私はお安く[#「お安く」に傍点]卑劣を背負い込んだまま寝そべっていたのだろうか。それで今度は自分に詰め寄った。お前はあの無垢な子供たちと少しも距たりをもちたくないためだと云った。だが結局、自分をしきりに隠そうとするおでん屋に来た朝鮮人とお前は何が違うと云うのだ! そこで私は抗弁のためとでもいうように李のことをやりこめようとした。それなら一時の感傷にせよ激情にせよ「俺は朝鮮人
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