死ななと思ふばかりぞ[#地から1字上げ]七月五日
今はただひねもすいねて夢も見ず心しづかに死ぬ日待ちつつ
這ひ上がる力もなくて谷底に落ちゐて尚も谷底に生く
谷底にいねつついく日経ぬるらむなど思ひつつけふもいひ食《は》む
急変を好めるさがにさからひていとおもむろに死にて行くらし
今一度都門の外《と》に出でなむと望みし願ひ徒《あだ》なるに似たり
[#地から1字上げ]七月六日
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夢
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畑田君間もなく京に移らるる由を聞きしに、それも望みなきこととなり、同君より聞きし様々の好意をたよりに、いろ/\の夢を結びゐしに、みな真に夢と消え去りたれば
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あはれ夢みな夢となり戦ひのやみなむ日まで君に逢へなく
空中の楼閣忽ち土崩瓦解して身は寄す孤舟万里の波
あはれ夢夢みな夢と消え去りて病みこやしつつ独りいねをり
夢多きわが身は夢の破るるに慣れてしあればかなしみもせず
よしやよし夢は破るとかなしまじ夢多きこそわがさがなれば
こりもせで夢破るれば新たなる夢に耽りてまた夢を追ふ
[#地から1字上げ]七月四日―十日
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