[#ここから4字下げ]
金子君の古稀を超えたまひしを祝して
[#ここで字下げ終わり]
やすやすと古稀の坂をしうちこえて尚ほ登りゆく君をことほぐ
大方の友はみな土となりて君のみひとり古稀を超えゆく
喘ぎつつ登りゆく我を顧みて高きにありて君さしまねく
[#地から1字上げ]十一月十八日

[#ここから2字下げ]
垂死の床にありて
[#ここで字下げ終わり]
久しくもやみこやす
わが魂の浮き沈み
今日にても
明日にても
早くぽつくりと死にたしと
思ふ日のあり
二年《ふたとせ》三年《みとせ》
尚ほ生きなむと
願ふ日もあり
[#地から1字上げ]十一月十八日

[#ここから2字下げ]
徳田志賀両君に寄す
[#ここで字下げ終わり]
牢獄につながるること十有八年
独房に起居すること六千余日
闘ひ闘ひて生き抜き
遂に志を曲げず
再び天日を仰ぐに至れる
同志徳田
同志志賀
何ぞそれ壮んなる
日本歴史あつてこのかた
未だ曾て例を見ざるところ
ああ羨ましきかな
ああ頼母しきかな
ああ尊ぶべきかな
これ人間《ジンカン》の宝なり
七十の衰翁
蕭条たる破屋の底
ひとり垂死の床にありて
遥に満腔の敬意を寄す
[#地か
前へ 次へ
全25ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
河上 肇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング