ら1字上げ]九月二十二日
今ははや望みもなしと諦めて明日ともなればはや忘れつつ[#地から1字上げ]九月二十五日
枯れし身にはや甲斐なからむとけふよりは灸することも思ひとまりつ[#地から1字上げ]九月二十九日
小さなる蚤一つ這へば感じたる皮膚もたるみて鈍りはてつつ[#地から1字上げ]十月二日
けふはしも老いらくの身の尚ほ生きて治安維持法の撤廃にあふ[#地から1字上げ]十月五日
十余年会はざりし人のとめ来たりわがすがた見て涙をこぼす[#地から1字上げ]十月十二日
湯ぶねにて病みほほけたる我を見て感慨無量と人くりかへす(この春銭湯に浴せしが、生涯にての最後となるらし。けふその日のことを思ひ出でて)[#地から1字上げ]十月十二日
身をちぢめふせゐる我を憐みて秋の夕日の枕べにさす(はや寒さを感ず)[#地から1字上げ]十月十二日
この冬は越えがたからむいざ急ぎ書きたきことも書きてしおかむ
この冬は越えがたからむ食べたしと欲りするままに物も食《を》しなむ(元気またなく、やはり駄目かなと思ふ)
[#地から1字上げ]十月十三日

いのちありて白昼赤旗ひるがえる日にも遇ひけりいのちなるかな[#地から1字上
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