頭のみは日に恋ひつのる
分厚なる黒餡つつむ饅頭にまされる味は世にあらじかし
ふるさとの焼き饅頭の黒餡のにほひこほしむ老病の身
仏壇に法事するとてうづたかく饅頭盛りし昔なつかし
[#地から1字上げ]九月九日
さ庭べに擬宝珠の花咲きいでて今年の夏もまた逝きにけり[#地から1字上げ]九月十日
今しばしいのちを許せ力をも今少したべわが造物主
今の時見す見す死んでたまるかい元気を出してまた振ひ立て[#地から1字上げ]九月十一日

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平和来たり米国の日本管理始まる
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次ぎ次ぎに拉致されてゆく高官の名を聞くだにも生ける甲斐あり
東条は最後になりても死にそこねアメリカ兵の輸血を受けぬ[#地から1字上げ]九月十二日
死にそこねアメリカ人に救はるる東条こそは日本のシムボル[#地から1字上げ]九月十五日
知恩院のゆふべの鐘の聞こゆなり久に絶えにしその鐘の音の[#地から1字上げ]九月二十日

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雑詠
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久しくもさかる花よと見てありし夾竹桃も今は老いけり
[#地から1字上げ]九月十三日
飽きるまで物|食《を》しに来よとよ
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